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Rum Flavored Chocolate (日本語版)

Summary:

ウェンディはスタンにどうしても好きになってほしくて、何でも試す気満々。
ネットで見つけた恋愛ポーションだって、迷わず使っちゃうくらい。

Work Text:

ウェンディのポンポンが手からふわっと飛んで、地面に落ちる前に素早くキャッチした。  
頼むから気づかないでくれよ……。  
スタンはいつものように友達3人と一緒にスタンドに座ってる。  
額に汗がにじんでた。運動のせいもあるけど、ほとんど緊張のせい。  
今夜は大事な試合だし、チアリーダーキャプテンとして、みんなにめっちゃ印象残さなきゃ!

チアのルーティンが終わると、観客から拍手がどっと沸いた。  
女の子たちは得意げな笑顔で、スタンドの空いてる席にぞろぞろ移動した。  
2月の夜の空気はキリッと冷たくて、もう空は真っ暗。  
好きなあいつに、今なら自分のダメなところ見られずに済む。  
ウェンディはわざとスタンの真ん前の席を選んだ。  
あいつ、まだ友達と喋り続けてる。  
人生で一番大事な女が目の前に座ったっていうのに!

ウェンディは気にしない。自分で気づかせてやる。  
優雅に手を顔に持っていって、軽く咳払い。  
反応なし。  
ちょっと待って、もう一回咳。  
……やっぱり何もなし。

「…げほん。あっ! やっほー、スタン」  
ウェンディはわざとびっくりしたふりして、くるっと振り返って明るく言った。  
高い声だから絶対聞こえるはず。

「あ、よっ」  
スタンが短く返した。

ウェンディ、少し間を置いてからまた口を開く。  
「ねえ、今日のチアどうだった? みんなでめっちゃ練習したんだよ、完璧にしたくてさ!」  
「うん、良かったよ」  
「えっと……変なとこ、ミスとか、気づかなかったよね?」  
「いや、別にちゃんと見てなかったし。カイルが見てたかも?」  
スタンは赤毛の友達の方を見た。

「俺も見てなかった」  
カイルが即答。

「……そっか。まぁ、ミスなんてしてないし! 良かったって言ってくれて嬉しいよ、スタン!」  
「うん、まぁね」

それでウェンディは前を向いた。  
顔がカーッと熱くなった。  
あいつ、ルーティンすらちゃんと見てなかったんだ……。  
ムカついてきて、自然と「どうやったら好きになってくれるかな」って考え始めた。  
そしたら思い出した。

数日前の夜、テレビ見てたらカスタム恋愛ポーションの広告が出てたんだよね。  
作って飲ませるだけ。天才すぎる!

その夜、家に帰ってからダッシュで部屋に駆け込んで、緑のカウズのチアユニフォームを脱いだ。  
まずレシピ探して、次にどうやって飲ませるか考えなきゃ。  
完璧な計画が必要。  
でもウェンディ、そういうのめっちゃ得意だから。

次のバレンタインは月曜日。  
チョコに仕込むとかどう? 2日あれば調合もできるし渡せる。

急いでパソコンつけて、指がキーボードをバシバシ叩く。  
「簡単 恋愛ポーション 作り方」でググったらすぐ出てきた。  
最初に見つけたサイトのレシピは簡単そう。  
ユリの花びら、クランベリージュース、砂糖、死んだ人の遺灰、ラストにラメ。  
ほとんど家にあるけど、クランベリージュースと遺灰だけ買いに行かなきゃ。

「……ふーん」  
ウェンディは小さくつぶやきながら、細かい文字をガン見。  
「私も飲まなきゃダメなんだ……。半分は自分、残り半分は相手。そしたら二人とも……死ぬまで続く最強の愛の絆で繋がる……」  
なんか燃えてきた。  
「味、美味しいといいな」

階段の手すり握りながら母ちゃんに叫んだ。  
「ねえ! 土曜日にクランベリージュース買ってきて!」  
「はーい、買うよー!」  
母ちゃんの返事聞こえて、ウェンディは髪をバッサバッサ揺らしながらまた部屋に駆け上がった。  
ジュースはOK。あとは遺灰。  
明日にしよう。今日はもう頭パンパンで疲れた。

ふわふわのピンクのベレー帽をそっと外す。  
さっきのチアで髪がボサボサ。  
「おやすみ、ベレー。明日からあいつを落とすから見ててね」って囁いた。

——

土曜の朝。ブラインドの隙間から陽が差し込んでる。  
ウェンディは眠そうに目をこすって、今日の予定思い出して一気に目が覚めた。

「灰、灰、灰……」  
部屋の中をウロウロ。  
パジャマ脱いで歯磨きしたら頭冴えるかな。  
結局バスルームでもウロウロ。  
「集中しろ! 計画失敗したら終わりだぞ!」って自分に言い聞かせたらやっとスイッチ入った。

歯磨き粉をチューブから出そうとしてイライラ。  
上からギュッとやってもちょろっとしか出ない。  
まぁ、キラキラしてて可愛いし。  
新プラン、外歩きながら考えることにした。

外に出た瞬間、肺が凍るような冷たい空気。  
コロラドの冬、特に1月2月は最強に寒い。  
スマホ見たら18°F。サウスパークじゃ普通。  
ふわふわのブーツで雪をザクザク踏みながら、学校→コミュニティセンター→教会の横を通る。  
教会の中から声がする。  
……ん? 土曜なのに?

気になって階段登って、そーっと重いドアを開けた。  
牧師のマクシが紙読んでて、時々ハンカチで目拭いてる。

あ……誰か死んだんだ。  
誰だろう。見たい。  
9歳のウェンディは、他人の葬式に勝手に入るのが失礼って概念がまだ薄い。  
ギィィって音立てながらドア開けて、後ろの方に座った。  
おばさんたちにジロッと睨まれた。

前の方にカイルが座ってる。緑のトラッパーハットですぐ分かる。  
他の3人いないの変だな。カイルの親族とか?

マクシ牧師が紙から顔上げて、  
「えー、彼は勇敢な子で、かわいい笑顔が自慢で、友達と走り回って遊ぶのが大好きで……えっと、お父さんの『特別な』雑誌を読むのも好きでした」  
「……これ読んでいいんですかね?」って自分で困惑してる。

ウェンディ、心臓がドスンって落ちた。  
かわいい笑顔……? この町で、いや世界で、そんな子って……

「ケニーがみんなにもたらしてくれた素敵な思い出を、私たちはずっと忘れません。R・I・P」  
ウェンディ、ホッと大きく息吐いた。  
恋愛、まだ大丈夫そう。

「遺体はかなり損傷がひどくて……開棺は無理だったので、火葬しました。なのでこちらで遺灰に手を合わせてください」  
……ピコン。  
電球がついた。

みんなが順番に遺灰に手を合わせて帰っていく。  
カイルが両親と一緒に通り過ぎるとき、悲しそうな目でチラッと見てきた。  
ウェンディは最後まで残って、  
「牧師さん、私だけで少しお別れしたいんですけど……」  
「え、まさか死体とセックスしようとかじゃないよね?」  
「……あ、火葬済みか。じゃあ2人きりにしてあげるよ」

牧師が事務所に戻ると、LEDの明かりに照らされて、コート掛けに怪しい形のものが……首輪? いや少年の形?  
ドアが閉まった瞬間、ウェンディは紫のキラキラリュック開けて、骨壺ごとスッポリ。  
ジーッと閉めて、ダッシュで脱出。  
灰ゲット。クランベリージュースもすぐ来る。

午後になると少しだけマシな寒さ。  
耳の先は真っ赤だけど。  
スキップ気味に家に帰って、  
「母ちゃん! ジュース買った?」  
「買ったよー! そんなに楽しみなの? そんな美味しいの?」  
「うん! むくみ解消に最高なんだよね!」  
ボトル奪うように受け取って、二階へダッシュ。

部屋で大興奮。  
やっと運命の人と結ばれる。  
8歳って女の子にとって超大事な時期だからね。

鍋(実はキッチンから拝借したでかい金属ボウル)を出して、レシピ再確認。  
時計は17:32。急がなきゃ。

ユリの花びら一枚。ドレッサーの花瓶からちぎる。  
(また生えるよね……)  
クランベリージュース300ml。  
砂糖と灰入れて溶かす。  
最後はラメ。たっぷり振った。  
これ抜いたら効かないでしょ。

スプーンでかき混ぜて、コップですくう。  
濁ったピンク赤色にキラキラが渦巻いてる。  
決戦の瞬間。  
ゴクッと一気に飲んだ。  
冷たくてなんかスモーキーな味。でもまあまあ。  
スタンには「ラム風味のチョコ」って言えばバレない。

シリンジでハート型チョコに注入。  
ベルベットのリボンで包んで、ドレッサーへ。  
夕飯食べながら、明日と明後日のシミュレーション。  
日曜に食べて「こんな子見逃してた!」って気づいて、月曜にみんなの前で告白。  
「半分は自分、半分は相手。死ぬまで続く最強の愛の絆」  
その言葉が頭の中で反響しながら、ウェンディは深い眠りに落ちた。

——

翌日。ハートのチョコ箱持ってスタンの家へ。  
歩いて5分くらいだから凍傷の心配なし。  
凍傷とかキモいもん、見られたら嫌われちゃう!  
ポケットに手突っ込んで、ドキドキしながらインターホン。  
古くて今にも壊れそうなやつ。

「……ウェンディ? どした?」  
スタンが眠そうな目で出てきた。

「やっほー! 今忙しい?」  
「えっと……今、みんなで遊んでて」  
後ろからカートマンが顔出して、  
「おい弱っ! 女連れてきたの?」  
カイルも困惑顔で立ってる。  
床にボードゲームの駒が散乱。誰かキレたっぽい。

「ケニーの葬式、なんで来なかったの?」  
「あー、あいつどうでもいいし」  
スタンが平然と言った。

「……そっか」  
空気が重くなってきて、ウェンディは本題へ。  
「スタン、これ」  
背中からチョコ箱を出して渡す。

「うわ、マジで女の子からチョコ!?」  
カイルが興奮。  
「今年は変なオッサンからしか貰えないと思ってたのに」  
カートマン。

「うるせえ!」  
スタンがキンキン声で返す。  
「ありがと、ウェンディ」  
「ラム風味だよ」  
「……へえ」  
ウェンディはくるっと回って帰った。  
やっと恋が始まる。

スタンはドア閉めて、  
「俺、ラムチョコあんま好きじゃないんだよね……母ちゃんに飲まされて最悪だった」  
「俺が食う! ラムって海賊の酒だろ? 俺、最強の海賊になるわ」  
「太っちょが食うとか当然だろ」  
カイルが呆れてる。  
結局カートマンが全部食べた。

——

月曜。学校のバス降りて、みんなと一緒に校舎へ。  
めっちゃ寒いのに手汗がやばい。頬も熱い。  
手袋でゴシゴシ拭いて、スタンを探す。  
すぐ見つけた。カフェテリアの入り口で、カイルとカートマンと3人。

自信満々に歩いて近づく。  
「スタン、なんか私に言うことない?」  
まつ毛パチパチ。

「……え?」  
「チョコうまかったよウェンディ!」  
カートマンが割り込み。

「!?」  
「カートマン! 言うなって!」  
スタンが慌てて、目を逸らしながら、  
「ごめん……俺、ラムあんま好きじゃなくて……カートマンが食うって言うから……」

ウェンディ、心臓が床まで落ちた。  
「……じゃあカートマンが恋愛ポ……」  
口押さえたけど遅い。  
カイルが眉上げてる。

「なんでもない! ごめん、行かなきゃ!」  
顔隠して4年生の教室に逃げた。  
ガリソン先生の授業でもいい。カートマンの近くにいたくない。

……まさか本当にカートマンとソウルメイト?  
嫌いなのに。昔ぶん殴ったのに。  
席に座って、現実がジワジワ染みてくる。

休み時間。  
カートマンを尾行しようと、12フィートくらい距離取ってついてく。  
怪しまれないように……って集中しすぎて、周り見てなかった。  
ドッジボールに顔面直撃。雪にダイブ。

「くそっ!」  
恥ずかしくて動けない。  
振り返った3人。

「大丈夫?」  
スタンが心配そう。  
ウェンディ、勇気出してカートマンの顔の前に立つ。  
どんどん近づいて……  
「うわっ!」  
カートマンが吹っ飛ばす。  
唾が顔にかかってビクッ。

「何してんだよ! 女とかマジ無理! きもっ!」  
スタンは気絶。雪にドサッ。

……え? ソウルメイトなのに?

「ウェンディ、ちょっとこっち」  
カイルが真剣な顔でフェンスの方へ。

「チョコに恋愛ポーション入れたでしょ。俺もあのCM見たけど、あれ詐欺だから。カートマンに惚れてないって。マジで分かんないの?」  
ウェンディ、クラクラ。  
あんな豚にキスしかけた……!  
しかも本当は好きじゃない!

キャーーー!!  
校庭中の視線が一斉にこっち。  
カイルが慌ててフェンス側に連れてく。

「変なポーションとかじゃなくて、普通にバレンタイン誘えば? スタン、もうお前のこと好きだよ。知らなかったの?」  
ウェンディ、嬉しさでまた叫びそうになったけど、カイルが手で口塞いだ。

「落ち着けって。行ってこいよ」

「……キラキラするアイデアだね」  
「は?」  
「なんでもない。ありがと。あのクソ野郎に惚れてなくて良かった」  
「お前は別のクソ野郎が好きってだけだろ。どっちも大差ないけどな」  
「……確かに」

雪にスタン型の穴が残ってる場所に戻る。  
スタンとカートマンはいない。  
近くでケニーが雪だるま作ってるけど顔なし。  
(クリスマスの再現はごめんだもんね)

「ケニー、スタンとカートマンどこ?」  
「スタン気絶したから、カートマンが保健室連れてった」  
「え、でも聞きたかったのに……」  
「もう起きてると思うよ。がんばれよ、お嬢ちゃん!」  
ケニーがチャラい感じで煽ってくる。

保健室にダッシュ。  
スタンがベッドで座ってて、看護師はなんか薬で寝てるっぽい。

「スタン、私——」  
「ウェンディ、何!? 俺の目の前で浮気すんなよ!」  
「……浮気?」  
「彼女なんだから、他の男にキスしようとするのありえないだろ!」  
スタンが唇尖らせてる。

「……私たち付き合ってたの?」  
「うん?」  
「……そっか。じゃあ魔法で無理やり魂の絆作らなくても良かったんだ」  
「うん」  
「てかカートマンとかマジ無理だし。ハッピーバレンタイン、スタン!」

頬にチュッ。  
スタン、即嘔吐。ベッドにゲロ。  
看護師は多分気づかない。

ハッピーバレンタイン!